ヱヴァンゲリオン「序」2回目鑑賞後の感想(その壱)

 あんまり長くなったので分割した。前半で記すのはシンジについて。相変わらず資料的価値のないエントリーでサーセンwww

  • 学校での日常シーン、当初シンジは周囲と「意図的に」距離を置いていた。初号機パイロットである事が露顕するTV版のイベントが消え、トウジに殴られるイベントだけが残ったためだろう。トウジと和解した後の描写はあまりないので解らないが、多少はマシになったのではないか。体育の時間のシーンで「碇く〜ん」という歓声がプールから上がるのは以前と同じだし。
  • そのトウジに殴られるシーン。二度目に殴られる直前、目を逸らしてはいるがTV版より意思のこもった強い顔付きをしている。不満と強情さが露骨に顔に出てる。いやぁ変わったねえシンちゃん。
  • シャムシエル戦、光る触手に腹を貫かれたときの表情がTV版よりずっと痛そう。プラグスーツにも痕が浮き出てたし。エヴァに乗ることの苦痛と恐怖の表現が強化されているのがわかる。この傾向は、対ラミエル戦で更に強まる。あの描写によってトウジとケンスケにもシンジの苦境が存分に伝わっただろう。
  • シャムシエル戦後にミサトに叱責を受けた時のシンジの態度がきわめつけに悪い。「ええ、分かってますよミサトさん。もういいじゃないですか勝ったんだから。云われれば乗りますよ。乗ればいいんでしょう」とdisって襟首掴んで引き上げられた時、目を逸らしてるだけなのかと思ってたんだが、口の端に嘲り笑いを浮かべておるわ。「どうとでも云えば、殴りたきゃ殴ればいいさ。宥めようが脅そうが、なんだかんだ云ったって僕を乗せるしかないんだろ? いやなのを我慢して訓練して、持ち場で精一杯頑張ったのに云われることときたらこれだ。どうぞご自由に。やってられないよ」的な。そりゃミサトも手を上げるわけにはいかないだろう。そういう態度を示す奴に何云ったって無駄だし、結局ミサトは何一つ信用されてないってことだし、且つ殴ったらその全てを認めることになっちゃうからね。
  • しかもミサトが手を離して、諦めたように「もういいわ。先に帰って休んでなさい」って云ったら、わざわざ一歩下がってから部屋を出て行くいやらしさ。ミサトもむかつきと遣り切れなさで自分の頬をはたくわけだ。更にそのままプチ家出。ミサトは作戦部長としての立場もあるし、甘やかしていいことないので保安部に追跡させるだけ、自分の手で連れ戻すわけにもいかないという按配。「帰らないつもりね、あのバカ」というTV版そのままの台詞、意味合いがちょっと変わってくるね。
  • シンジが連れ戻された時のミサトの態度が抑制されてたのは見事。昔のままなら間違いなくキレてましたよ。「別に。どうでもよくなりました。何もかも。僕に自由なんてないんだ。どうせ僕はエヴァに乗るしかないんですよね。そのためだけに父さんに呼ばれたんだから。いいですよ。乗りますよ。それでみんながいいんだったら、僕はいいですよ」「僕には無理だって事分かってるんですよ。みんなもわかってるんだきっと。それでも怪我してる綾波ミサトさんや父さんが…」とまで云われちゃあね。まぁ、TV番の台詞も大概だったけどさ。
  • ゲンドウに対する拘りはまだまだ強く残っている模様。だからこそ「綾波レイ…父さんは何で笑ってるんだ。何で僕には笑わないんだ」と云っちゃうし、ミサトに「たぶん、お父さんがいるからよ。お父さんに自分を見て知って触れて、一言でいい、褒めてほしいのよ。孤独を感じさせない愛情が欲しいだけだと思う」と見透かされてしまう。ゲンドウの酷薄な態度と相俟って、この点はTV版より強調されているかもしれない。コミック版ほどにも報われないと思うけど。
  • ラミエルに最初に撃たれた時、延々と炙られながら「いやだ! もういやだ! ここから出してっ! 出してよ父さんっ! うわああああああああ!」と絶叫するシンジ。パイロットの苦痛と恐怖が最大限に表現されたシーン。どれだけシンジがエヴァに乗って蒙る苦痛を嫌がっていたのかが瞭然。一回目は頭部破損、二回目は腹部二箇所貫通、そして三回目は胸部融解。どれも一歩間違えば確実に死んでる。そりゃ嫌がるし、延々と乗せられ続ければ捻くれた態度も取りたくも、ミサトに反抗もしたくなるわなあ。
  • 二度目の夢のシーンでシンジのほぼ本音に近いであろう部分が吐露される。「嫌なんだよ、エヴァに乗るのが。うまく行って当たり前、だから誰も褒めてくれない。失敗したらみんなに嫌われる。酷けりゃ死ぬだけ。なんで僕はここにいるんだろう…」「何か変わるかもって、何かいい事あるかもと思ってここに来たんだ。嫌な思いするためじゃない」「そうやって、嫌な事から逃げ出して、ずっと生きていくつもり?」「生きる? なんで生きてるんだ僕は…。生きていてもしょうがないと思っていたじゃないか。父さんもミサトさんも、誰も僕をいらないんだ。エヴァに乗れない僕は必要ないんだ。だから僕はエヴァに乗るしかないんだ。だから僕はここにいられるんだ。だけど、エヴァに乗ると……」。TV版よりニヒリズムが強化され、嫌悪を明確に表現するシンジ。アプリオリなレゾンデートルを求めるところは変わらないが、繊細な部分が後退してより今風の子供らしい造形になったといえる。貞本エヴァ的になったというか。まだあの境地までは遠いけど。
  • ヤシマ作戦前のシンジの態度は明確な反抗。「シンジ君、集合時間はとっくに過ぎてるのよ。あなた、自分で決めてここに残ったんでしょ? だったら自分の仕事をきちんとしなさい」と云われて、「怖いんですよ。エヴァに乗るのが。ミサトさん達はいいですよ。いつも安全な地下本部にいて命令してるだけなんですから。僕だけが恐い目に遭って…ミサトさん達は狡いですよ」と睨み返す。自分にばかり面倒事を押し付けて、自分は安全地帯から命令するだけのチキン野郎と罵倒したに等しい。しかし、おかげでミサトも明確な態度を示すつもりになっただろう。韜晦や嘲笑より反抗のほうがずっとマシな態度だからだ。彼女は罵倒を真っ向から受け止め、真摯に自分の本音をシンジにぶつける。セントラルドグマで語られたことは彼女の信念であり真実。だからこそシンジも翻心したのだろう。上から命令するだけでも安易に宥め賺すでもなく、自分の立場を斟酌してくれた上で頼むと云ってくれたミサトに。一蓮托生だと云ってくれたミサトに。
  • 更衣室での「これで…これで死ぬかもしれない」「いいえ、あなたは死なないわ。わたしが守るもの」「…僕に守る価値なんてないよ」というレイとのやりとり。反抗が過ぎ去った後に残ったのは自分に対する自信の無さ。そしてヤシマ作戦直前の呟き。「綾波ほどの覚悟もない。上手くエヴァを操縦する自信もない。理由も分からずただ動かせてただけだ。人類を守る? こんな実感も湧かない大事な事を…何で僕なんだ…」。最後に残ったのはやはり自分自身への不安。
  • が、ゲンドウに更迭されかかりながら、トウジやケンスケの励ましを思い出し、涙を流しながら恐怖を押さえ込み、這いずりながら射撃位置へと戻っていく姿はこれまでになかった。不安をねじ伏せて必死に為すべき事を為そうとする前向きな姿勢。ミサトとゲンドウの会話が聞こえていたのかもしれない。であれば尚更退くわけにはいかないだろう。ゲンドウを見返すために、そしてミサトの信頼に応えるために。

 ここで一旦カット。まだ時間掛ければ書けそうだけど、皆さんご存知の通りやり始めるとキリがない話でございますんで。