優勝ですってよ奥様

 三大陸トーナメント、日本 4-3 スイス。以下はゲームサマリー。

前半

 ホントにどうなることかと思った。スイスはお得意のオートマティズムを遺憾なく発揮し、中盤をコンパクトに、選手間の距離をコントロールしつつ連動して攻守に主導権を握る。日本は翻弄され、振り回され、距離を詰められない。詰めても簡単にかわされ、シンプルなボール運びであっという間にピンチを迎える。やっとボールを奪っても前へボールを運べず、出しどころを迷って横パスとバックパスを繰り返す。サイドからの崩しは警戒されており瞬時に潰される。中盤がコンパクトになっているせいで縦パスも入らない。時折サイドチェンジしても直ぐに囲まれて前へ運べない。マキマキがずっと孤立してことが全くうまく廻らない攻撃を象徴していた。茸や松井が殆ど守備に奔走していたことも。
 そんな中で11分にFK、13分にPKを奪われたのは必然と云え、寧ろ流れの中から失点しなかったことに安堵すべき、そんな状況が続いた。釣男がPKをひとつ与えたものの最終ラインが踏ん張り、幾度となくサイドからの突破を許しながら追加点を与えなかったのが最大の評価ポイントか。攻撃では松井が一度スピードで抜けて惜しいシーンを作ったものの、マキマキやガチャピン、駒野の裏への飛び出しは悉くラインコントロールに絡め取られ決定的な場面を作れず。殆ど自陣に押し込まれたワンサイド的展開のまま、0-2でハーフタイムを迎えた。完全にスイスに支配され、コントロールされている。さすがは直前にオランダを破ったチームだなと半ば呆れつつ画面を眺めている俺がいた。

後半

 どうやらハーフタイムに爺さんの檄が随分と飛んだらしい。相手をリスペクトし過ぎている。2失点は集中力の欠如。しかし前半は忘れろ。決定的な場面はさほど作らせていないのだから、後半も自分達の形を作れるように積極的にいけ。それが効いたのかどうか、後半はまるで別のチームのような動きを見せた。
 日本本来の動きである縦方向への連動とサイドへ振った崩しが徐々に機能する。前半はチンチンにやられまくっていた競り合いでも徐々にボールをキープできるようになってきた。恐らくスイスも前半かなり飛ばしていたのだろう。或いは選手交代が悪い方に転んだか。当たりの強さもパスワークの自由度も次第に低下してゆく。個の能力だけであれば対処の余地もあるとばかりに、途中からは日本が一方的に押し込む時間帯が増えていった。
 先ず52分、中央でボールを持った茸から左サイドの松井へフィード。松井は個人で仕掛け、PA内で倒されてPKを得る。茸が難なく決めて1-2。中央で茸がフリーで持てるようになったことが前半との大きな違いであり、繰り返された中盤での縦の動きがスイスのポジションをバラけさせ、オートマティズムを機能させなかった結果でもある。
 ここから歯痒い展開が続く。54分には茸から釣男へのクロスが跳ね返ったところをイナがボレー。惜しくも外れたが、前半敵陣に殆ど侵入できなかった釣男とイナがこの位置にいたことが攻撃性と連動性の何よりの証拠だろう。以後も釣男は最終ラインから何度も攻め上がり、最前線へ顔を出すお得意の動きを見せた。56分には自ら持ち上がり、ガチャピンとのワンツーから強烈なシュート。これはGKに阻まれる。58分にも茸からのクロスに飛び込んでヘッド。こちらはゴール右に外れ、フォローしたガチャピンがマイナスのクロスを戻すもフリーの松井が宇宙開発。59分にはスローインから駒野が上げたクロスをガチャピンがトラップミス。そして62分にはほぼゴール正面からの茸のFKがGKの好守に阻まれてしまう。いい形で圧倒的に攻めており、フィニッシュまでの形も悪くないのになかなか点が入らないという嫌な展開。案の定、65分にはサイドからのクロスをヘッドで合わせられる。幸い右ポスト直撃で助かったが、そろそろ追加点を入れないと「してやられそう」な雰囲気が漂う。
 雰囲気いいんだからそろそろ決めろと思っていた67分、左サイドからの茸のFKに釣男とクロスする形でゴール前に侵入したマキマキがドンピシャでヘッドを合わせて2-2。DFに身体を押さえられていたが、逆にそのおかげで宇宙開発せずに済んだんじゃないかと思うほどジャストミートしていた。前半はオフサイドを喰らいまくり、後半は専ら身体を張ったポスト役キープ役を黙々とこなしていたマキマキ。今日はいい仕事してました。
 その後両チームとも選手交代を行い、フレッシュさを取り戻したスイスが攻勢に転じる。しかし日本も果敢に詰め、マークを外さず、堅固な守りで追加点を許さない。逆に日本が78分にPK獲得。山岸の果敢な縦突破から得たCKに飛び込んだマキマキが引き倒されて得たものだ。マキマキGJ。これも茸が落ち着いて流し込み、3-2と日本がリードを奪う。しかし好事魔多しとは良く云ったもので、直後に両チームとも交代を行った結果マークが崩れてしまい、入ったばかりの貴章がこれまた入ったばかりの選手に振り切られてCKからの得点を許してしまい3-3に追い付かれる。
 以後は交代も挟んで一進一退の攻防が続き、またPK戦かと思われたロスタイム。入ったばかりのケンゴが中央から左へ絶妙なフィード。山岸が縦に切れ込んでPA内から放ったマイナスのクロスをケンゴがゴール正面で落としてシュート。GKが辛うじて弾いたボールを、今度は詰めていた貴章が倒れ込みながらボレー。代表初ゴールで4-3と勝ち越す。その後殆どプレイなくホイッスルが鳴り、日本が勝利。ついでになんとトーナメント優勝も転がり込んできたらしい。ありえねーw

総括

 先ず後半に攻撃が存分に機能したことは手放しで評価していいだろう。4点中3点がセットプレーとPKによるものだったとはいえ、決勝点は鮮やかな流れからの得点だったし、他にもこのようなチャンスは数多く作っていた。その他3点も果敢な攻撃と連動による崩しによって得たもので、久々に攻めの形が見事に噛み合った試合だった。
 ただ、失点の仕方が最悪。全部凡ミス。折角流れの中からの失点をゼロに抑えたのに勿体無さすぎる。3点中ヨシカツの失点は厳しく見てもFKの1点だけであり、いずれも守備の集中力欠如が生んだ「防げる」失点だった。この点大いに反省する必要があるだろう。
 とはいえ、攻撃陣が欧州中堅国相手にキッチリ結果を出したことは非常に喜ばしい。期待された松井のスピードと強さ、釣男の積極的な動き、マキマキの好調ぶりと矢野の代表初ゴールなどポジティブな面が多く見られた収穫の多い試合だったと云えるだろう。以下寸評。

  • 駒野とkajidaisanjiの動きは良かった。特に駒野。松井と山岸の動きがいいんで非常に効いていた。
  • 今日のガチャピンは「やや良いガチャピン」。ゴル前ではもっと積極的に。
  • ボンバヘは身体を張って決定的な場面を食い止めまくっていた。乙。
  • 茸はかなり前を向いてプレイできていたので非常に好印象。いつもこんな風にやらせて貰えればねぇ。
  • イナはゴツゴツ当たって相手を転がしまくっていた。やっぱトップ下よりボランチやね。
  • 山岸はアグレッシブな動きを繰り返しており貢献大。サイドにも張れて縦にも突っ掛けられる人材は貴重だからね。
  • 啓太は特に前半やられまくって印象が悪かったが、後半はそれなりに押さえていた。地味だったけど元々そういうプレイヤーだしな。
  • 寿人はボールタッチが少なすぎて評価の対象外。
  • ケンゴ最高。実質2分ちょいの出場で勝ち越しシーンを演出。ふろん太サポとしては云う事のない結末でございました。