学祭前日

 百物語の企画をうっかりちゃっかり見つけた罠。盛り上がってるのを見てうずうず書きたくなるデストラップ。アホか。もう何年もまともな文章なんか書いてねえっつうの。でも空気を読まず小ネタで一本上げちゃう俺。なんという愚かしさ。ちにゃー。
 あー、なんか書いてたら久しぶりにBD観たくなってきた。DVD引っ張り出すか。いまあなたのーきまぐーれがーうごーきーだしーたー。

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「僕は部室を辞して校門へと急いでいた。早く帰ろう。明日は学祭初日で、以降最終日まで間違いなく泊り込みだ。寝泊りは部室でどうにかするとして、洗面具寝具着替えその他諸々、家捜しして鞄に詰め込むことを想像しただけでもうんざりする。最近毎日準備に奔走してたお陰で寝不足もいいところで、前にいつ帰ったかもよく覚えていない。鈍く痛む頭を振りつつ開け放たれた校門を通り過ぎようとする僕を、唐突に真横から電車の急ブレーキのような軋る音と、まるでハンマーでぶん殴られたような衝撃が襲う。誰かが校門を閉じたんだ。莫迦な。誰もいなかった筈なのに。どうして。為す術もなく弾かれる。飾り立てられたアーチの下で、混乱する僕の身体は門扉と門柱の間に…
 …僕は部室を辞して校門へと急いでいた。早く帰ろう。明日は学祭初日で、以降最終日まで間違いなく泊り込みだ。寝泊りは部室でどうにかするとして、洗面具寝具着替えその他諸々、家捜しして鞄に詰め込むことを想像しただけでもうんざりする。最近毎日準備に奔走してたお陰で寝不足もいいところで、前にいつ帰ったかもよく覚えていない。鈍く痛む頭を振りつつ開け放たれた校門を通り過ぎようとする僕を、唐突に…」

 …って話はどうだい? と僕は辺見部長にプリントアウトを手渡した。僕達文芸部は、明日からの学祭で即興文芸なる演し物をやる予定だ。客の前でどんどん文章を生成し、推敲無しで出力し、読んでいただく。そういう趣向だ。今のはちょっとした肩慣らしってわけ。
「ひでえ手抜きだ」
 部長は仏頂面で返事を投げて寄越した。眼鏡の奥の目が死んでる。無理もない、彼も僕も準備に追われてずっと泊り込んでいたんだ。会場のセッティングも終わったし、後は帰ってぐっすり寝ればいい。僕もそうする。
「最初の文章を作っちまえば、あとはコピペで幾らでも分量が増やせるってわけか。お前、こういう横着だけは得意だな。ま、機械的なリフレインで不気味さを演出しようってセンスは悪くない。ところで山村…」
 彼は何かを手にして立ち上がると、傍らの段ボールにプリントアウトを投げ入れる。ぎっしり詰まったその中身は、何故か皆同じものに見えた。
「そろそろ終わりにしないか。いい加減、俺を校門から出してくれないかね?」
 部長は握り締めたバールのようなものを、力任せに僕の頭上へと振り下ろした。