性転換エヴァンゲリオン 第壱話 『使徒、襲来』 脚本(Aパート)

 「性エヴァ」大本命の企画が始動。反応を見る為に先ずは第壱話Aパートのみ。お遊びを入れようと思ったら、元脚本がタイトすぎて捻じ込む余地なし。なのでストイックにジェンダーチェンジのみという内容になっております。上に何をトッピングするにしても、ベースはこんな感じってことで。
 では、状況開始。

承前

 以下のシナリオは、『EVANGELION ORIGINAL?』の書式に準拠して作成されています。但し、ビデオ収録版と差異がある場合にはビデオ版の描写に優先的に準拠しています。予めご了承下さい。

■第壱話「使徒、襲来」
脚本/庵野秀明
EPISODE:1 ANGEL ATTACK

 海に沈んだ都市、使徒と呼ばれる巨大兵器、人造人間エヴァンゲリオン、主人公と母親の関係と、印象的なモチーフや設定が散りばめられており、それらについて殆ど説明されることなく物語が進んでいく。そのテンポの良さ、魅力的な謎の存在等は新鮮であった。
「性転換エヴァンゲリオン」は、GAINAX庵野秀明監督にとっては、「ふしぎの海のジャン」以来、5年ぶりに発表したTVアニメである。この第壱話は、5年間待ったファンの期待を裏切らぬ出来であったといえよう。

Aパート

[テロップ]『時に、西暦2015年』(黒バックに白字)


○日本近海上・昼
  陽光きらめく洋上を飛行するヘリ。
  ビル等が水没している海上


  海上にヘリの影が落ちている。
  海中を進む巨大な人型のシルエット。


  水没した市街地を泳いでいる巨人のシルエット。胸部らしきものに光球が見える。


○某地方都市
   半分水没し、すでに朽ちている旧市街。SE*1は水鳥と蝉の声。
   線路や道路が、途中から海にのまれている。
  山を崩して作られている新市街。平野がない街並み。
  海岸線に陣を取っている、国連軍。
  水平線上に起こる巨大な水柱。
  無人の街に響くサイレンとアナウンス。


アナウンス『本日12時30分、東海地方を中心とした関東、中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は、速やかに指定のシェルターへ避難して下さい。繰り返しお伝えします〜』(OFF*2で流れている)


  ホームに止まったままのローカル線、蝉の声。
  その背後を線路を跨いで走る少女の影。
  無人のホーム群。
  「全線運転中止」が並ぶ掲示板。
  全ての信号が赤を点灯している。路肩に放置されたままの車。
  動くものが、何もない。
  無人の街を1台だけ、走る車。
  運転席。作動しているナビ・システム。ハンドルを握る男性。(顔は見えない)


マサト「よりによって、こんな時に見失うだなんて…まいったなあ」


  助手席上に無造作に置かれている、書類の束。
  少女の写真が見える。


  公衆電話をかけている少女。先の写真の少女である。
  受話器から流れている、録音テープ。


電話の声「特別非常事態宣言発令のため、現在、全ての通常回線は不通となっております」


シンコ「だめかあ…」


  困り顔で電話を切る少女。はき出されるカード。


シンコ「やっぱり、来るんじゃなかった…」


  街に爆音が響く。
  『第3新東京市13km、御殿場35km』の標識。
  目線を落とし手元の男性の写真*3を見る。


シンコ「待ち合わせは、無理かあ」


  チラッと時計を気にする。


シンコ「しょうがない、シェルターにいこう」


  彼の目線の先に立つ、一人の少年。(レイジに似ている)
  鳴きながら飛び立つ鳥の音。気を取られる少女。
  目線を戻す。
  が、少年はもういない。


  ズドォォォン!


シンコ「わあっ!」


  突然、少女の耳にとどろく衝撃音。(波ガラス、フェード・イン)
  ビリビリと震える建物のシャッター。風鳴りする電線。
  耳を押さえつつ、何が起こっているのかわからない少女。
  音のほうへ振り向く。


  山の奥から平行移動で出てくる重戦闘機群(垂直離着陸機)。
  続いて姿を現す、金属的な巨人(使徒)。
  息を呑む少女。


ネルフ本部、作戦管制室
  レーダースコープ等の描写。各種警告音が鳴っている。


男A「正体不明の移動物体は依然、本所に対し進行中」
女A「目標を映像で確認。主モニタに廻します」


  どよめく声。(OFF)
  指揮をとる碇。傍らに冬月。


冬月「…15年ぶりね」


  確信を持って言い切る女の声。


碇「ええ、まちがいない」


  モニタに映し出される使徒


碇「使徒よ」

サブタイトル『第壱話 使徒、襲来』(黒バックに白字)


  ビルの谷間をすり抜け、少女の頭上を越えて巨人に殺到するミサイル群。
  次々に着弾。巨人の上体が揺らぐ。
  爆風で破壊される登山鉄道の車輌。


パイロット「目標に全弾命中!…うわあぁっ!」


  巨人の手から伸びる光のパイルが重戦闘機を貫く。
  そのまま姿勢を崩し、少女の眼前に墜落する。
  跳躍し彼女の眼前に着地、重戦闘機を踏み潰す巨人。


シンコ「きゃあっ!」


  爆発する重戦闘機。
  身をすくませる少女。
  間に入り、彼女をかばうように急停車する車。
  割れるガラスの音、車体に石等の当たる音。
  ドアが開き、中で微笑んでいる男性。先の写真の男性である。


マサト「ごめん、おまたせ!」


  発砲する重戦闘機。
  車の周辺にも着弾。
  降り注ぐ破片。
  車の天井がへこむ。


シンコ「キャッ!」


  舌打ちすると、冷静に車をバックさせる男性。
  煙の中から出てくるボロボロの車。
  そのままギアシフトし、逃走を開始。


ネルフ本部・作戦管制室
  状況報告が次々と入っている。
  国連軍士官と同席している、碇と冬月。


男A「目標は依然健在。現在も第3新東京市に向かい、進行中」
女A「航空隊の戦力では足止めできません!」
軍人A「総力戦だ! 厚木と入間の機体も、全部上げろ!」
軍人B「出し惜しみはなしだ! 何としても目標を潰して!」


  軍人Bが手の中の鉛筆をへし折る。
  巨人に直撃して爆発するミサイル。


軍人A「何故! 直撃のはずよ!」
軍人B「戦車大隊は潰滅。誘導兵器も砲爆撃もまるで効果なしか」
軍人C「ダメよ! こんな程度の火力では埒があかないわ!」
冬月「やはり、A.T.フィールド?」
碇「ええ。使徒に対して通常兵器では、役に立たない」


  点滅する赤電話のランプ。カードキーを差し込んでから、軍人Cが取る。


軍人C「わかりました。予定通り、発動いたします」


○某地方都市
  巨人を取り囲むようにしていた重戦闘機群。
  一斉に全速で、巨人の側から離れて行く。
  車中から双眼鏡で見ている男性。


マサト「おい、まさか、N2地雷を使うのか?」


  山の向こうに消える使徒


ミサト「ふせろっ!」


  少女をかばう男性。
  白くとぶ使徒
  山の向こうで起こる大爆発。
  上がる巨大な火球。
  田畑を伝わってくる衝撃波。マサトの車へ。
  横に吹き飛ばされる車。
  耐える二人。
  車ナメて大火球。
  呆然と見ている二人。


軍人A「やった!」
軍人B「残念ながら、貴方たちの出番はなかったようね」
男A「衝撃波、来ます」


  モニターが砂嵐に。
  ポツンと取り残されたボロボロの車。
  周囲は爆撃跡の穴と巨人の足跡が散乱している。


マサト「大丈夫だった?」
シンコ「ええ…口の中がシャリシャリしますけど…」
マサト「そいつはけっこう。…じゃあ、いくぜ? せえ、のおおっ!」


  二人で横転した車を元に戻す。


マサト「ふぅ〜、どうもありがとう。助かったよ」


  そのしぐさを見て笑顔になる少女。


シンコ「いえ、私のほうこそ…葛城さん」


  サングラスを軽く取って、男性もまた少女にやさしく微笑みかける。


マサト「マサト、でいいよ。改めてよろしくな、碇シンコちゃん」
シンコ「はい」


ネルフ本部、作戦管制室(まだモニタは回復していない)
軍人A「その後の目標は?」
男A「電波障害のため、確認できません」
軍人B「あの爆発よ、ケリはついてる」
女A「センサー、回復します」
男A「爆心地に、エネルギー反応」


  愕然として立ち上がる軍人B。


軍人B「なんですって!?」
女A「映像、回復します」


  回復するモニター。炎の中、仁王立ちする使徒
  気落ちする軍人。


軍人A「我々の切り札が…」
軍人B「なんてこと…」
軍人C「化け物め!」


  波ガラスの中の使徒
  損傷した「顔らしきもの」を押し出し、その下から新しい「顔らしきもの」が生えてきている。


○国道
  街外れの国道を走るマサトの車。
  山の奥に高層ビルが数本見える(切り返しは先の爆発跡)
  ガムテープで仮止めしてある割れた車のパーツ。


マサト「ああ、心配御無用。彼女は最優先で保護してる。だから、カートレインを用意しといてくれ。直通のやつ。そう。…迎えに行くのは俺が言い出したことだからな、ちゃあんと責任持つって。じゃ」


  車載電話をオフにするマサト。


マサト(モノローグ)(しっかしもう最低。折角レストアしたばっかだったのに、早くもベッコベコ。ローンがあと33回、プラス修理費かあ。しかも一張羅の服まで台無しかよ…折角気合入れてきたってのに…くっそー…)


シンコ「あの、マサトさん」
マサト(現実に戻って)「なんだい?」
シンコ「いいんですか、こんなことして?」


  リアシートに山と積み上げられたバッテリー。


マサト「あー、いいんだいいんだ。今は非常時だし、車動かなきゃしょうがないだろ? それに、こう見えても俺、国際公務員だしね。万事オッケーさ」
シンコ「説得力に欠ける言い訳ですね」
マサト「つまんねえの。可愛い顔して、意外と落ち着いてんだな」
シンコ「…そうです、か」
マサト「あれ? 怒った?」


  マサトを睨み返すシンコ。


マサト「ゴメンゴメン。女の子だもんなァ」
シンコ「マサトさんこそ、歳の割りに子供っぽい人ですね」


  辛辣な切り返しに顔を引きつらせるマサト。
  道幅一杯に車を振り回す。響くシンコの悲鳴。


  炎の中の使徒。周辺を飛ぶ無人ヘリ。
  モニターで見ている碇ら。


  冬月「予想通り自己修復中ね」
  碇「そうでなければ、単独兵器として役に立たない」


  モニターに向かって光を放つ使徒
  ノイズに変わるモニター。


冬月「あら。たいしたものね。機能増幅まで可能なの」
碇「おまけに知恵もついたようだ」
冬月「再度侵攻は時間の問題ね」*4


  再度点灯するモニター。(別アングルで)


○地下モノレールトンネル
女A「ゲートが閉まります。ご注意下さい。発車いたします」


シンコ「特務機関、ネルフ?」
マサト「そう。国連直属の非公開組織」
シンコ「母のいる、ところですね」
マサト「まァなー。お母さんの仕事、知ってる?」
シンコ「人類を守る大事な仕事だと、先生からは聞いてます」


  降下を始めるカートレイン。
  作戦室の碇。OFFで電話を置く音。
  振り返る軍人C。


軍人C「今から本作戦の指揮権は、貴女に移ったわ。お手並みを見せてもらおうかしら」
碇「了解です」
軍人A「碇さん、我々の所有兵器では、目標に対し有効な手段がないことは、認めるわ」
軍人B「けれど、貴女なら、勝てるのかしら?」
碇「そのための、ネルフです」
軍人C「期待してるわ」


  テーブルごとエレベーターにて退場する軍人ら。
  響くアナウンス。


男A「目標は、いまだ変化なし」
女A「迎撃システム稼働率、7.5%」
冬月「国連軍もお手上げ、か。どうするつもり?」
碇「初号機を起動させる」
冬月「初号機を? パイロットがいないじゃない」
碇「問題ないわ。もう一人の、予備がとどく」


○地下モノレールトンネル
シンコ「これから、母のところへ行くんですか」
マサト「そうだね、そうなるね」
シンコ「……」


  眉をしかめるシンコ。回想入る。(短く)
  泣いている4歳のシンコ。横に大きな旅行鞄。


シンコ「母さん…」
マサト「あ、そうだ。お母さんからIDもらってないか?」
シンコ「あ…はい……どうぞ」
マサト「サンキュー」


  鞄から書類を取り出すシンコ。マサトに渡す。
  ちぎったあとにまたテープで張り合わせたあと。
  書類に目を通すマサト。


マサト「じゃあこれ、読んどいてくれ」


  書類を渡すマサト。表紙に『ようこそNerv江』の文字。


シンコ(ネルフ…母さんの仕事…)
シンコ「何か、するんですか? 私が」


  答えないマサト。
  急角度のトンネルをまっすぐに進む地下モノレール。(カートレイン)
  列車は二人の貸し切り状態。


シンコ「そうですね…用もないのに、母が私に手紙をくれるわけ、ないですよね」
マサト「そっか…苦手なんだな、お母さんが」


  下を向いたままのシンコ。


マサト「(独り言っぽく)俺と同じだな」


  顔を上げるシンコ。
  トンネル内を走るモノレールの壁が切れ、シンコらの目前に広がる巨大な地下都市(ジオフロント)。
  天井から差し込む赤い光。
  夕日の中のネルフ本部全景。高架線を走るモノレール。(河や小さな山林もある。街の道  幅は広く、巨大なリニア・レールが放射状に伸びている。天井からぶら下がっているビル群)
  感嘆の声を上げるシンコ。


シンコ「スゴイ! ホントにジオフロントだ!」
マサト「そう。これが俺たちの秘密基地、ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となるところさ」


  施設内に入って行くカートレイン。

*1:「SE」は映画用語。「SOUND EFFECTS」の略。つまりセリフや音楽以外の効果音を指す。

*2:「OFF」とは画面に映っていない人物がセリフを言うこと。

*3:マサトの写真には手書きで、「シンコちゃん江 俺が迎えに行くから待っててくれ! イケメンフェイスに注目!!」と書かれており、顔に矢印が伸びている。

*4:冬月の言う機能増幅とは、光を放って攻撃する能力を身につけたという事。碇の言う知恵とは、攻撃をしていない無人ヘリを敵だと認識した事を意味する。